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歴史の視点  新しさは錯覚である

 新しいと思われていたものが、調べてみれば新しいものでもなんでもなく、寧ろ常に人類史の中に出てきていたという話しは、特段珍しいものでもない。

 例えば、婚姻制度はどうだろう。

 非婚化晩婚化と言われて久しいが、せっかく結婚しても、生活の場が離れていたり、婚姻届をだしたわけではないが、結婚したのと同じ状態にあるものと自他共に認める事実婚であったりと、婚姻(広く夫婦関係)の形はかなり多様だ。
 一昔前までは、婚姻といえば新郎新婦の両親の関係や生まれ順(例えば長男か次男か、といったこと)が大きく作用したし、新郎新婦の親族や友人、会社の関係人を集めて披露宴を行うというイメージも強かった。女性について言えば、結婚は自身の名字を変え、殆ど見ず知らずの新郎の家の一員になるということでもある。女性と姓の関係は、特に特殊で古い問題ではない。学問の世界からワイドショーの世界まで幅広い層が関心の対象としてきたものである。

 このような「古い」結婚観からの変化は、一部の層からはこれまでの封建的な価値観からの明確な脱却であるとされ、それは明らかな「進歩」であるとされた。この場合の進歩とは、しかしながら、「2000年前の骨董品」(注1)をはじめて見たときのような感覚でしかない。

 というのも、一定の契約書に従って仲立ち人なしで婚姻を行うという行為自体は、2000年以上前のエジプト下層民が頻繁に行っていたことだからだ。婚姻の解消(離婚)は、単に法律上の契約の解除程度のものでしかなく、今日の我々が結婚に抱く「家族ぐるみ、一生もの」と比べれば、かなり程度の軽いものでしかなかったのである。

 話しは変わって、病気の世界はどうだろうか。

 鳥インフルエンザ――というと、我々の記憶にあるのはここ数年で猛威をふるったウイルスで、養鶏農家に大打撃を与えた疾病であるということくらいだろう。農水省の公表によると、日本で最初に鳥インフルエンザが確認されたのは平成22年11月以降で、9件24農場で高病原性鳥インフルエンザが見つかった。平成23年3月24日には全ての防疫措置が完了し、同年6月にはOIEの基準に基づいて、鳥インフルエンザ清浄国に復帰したという。(注2)

 このように聞くと、鳥インフルエンザはつい最近の流行病のように感じられてしまうのだが、実際には19世紀の文献に既に登場している。ウイルスのタイプまで確認されているのは1959年スコットランドでの流行で、以降、数年に一度は鳥インフルエンザが流行している。(注3)

 婚姻制度にせよ、インフルエンザにせよ、我々が気をつけなければならないのは、新聞や教科書、テレビ、雑誌で与えられた「新規」と思われる情報が、その実新規でもなんでもない可能性である。最後に、更に身近な例を挙げよう。

 この間、私はたまたま見ていたテレビで、夜の街を巨大な白い物体がトラックで運ばれていくシーンを見た。モザイクがかかっており、出演者がそれは何かを答えるのだが、どう見ても「輸送される新幹線」なのである。私は、同じような映像を過去2度見ている。小さな子供であれば、新幹線がトラックで運ばれていく様子は新鮮そのものであるに違いない。それはその子にとって「新規」なものだ。しかし、中高大とすすむにつれ「毎回同じようなものをやっている」と思うようになる。そして、少し賢い人であれば「自分が小さいときにみた映像も、多分繰り返しのワンシーンだったのだろう」と理解するはずだ。

 新規かどうかは、歴史を学べば自ずと判断できるようになるだろう。私はそこまでするだけの体力も教養もないが、それらが備わっているひとはやってみてほしい。

注1 山本七平『存亡の条件』ダイヤモンド社、18頁
注2 農林水産省「鳥インフルエンザに関する情報」(http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/index.html)
注3 美馬達哉『リスク化される身体 現代医学と統治のテクノロジー』青土社、88頁
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