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歴史の視点 歴史認識の方法~未来から現在を規定する④

【矛盾する社会化された私 幸徳秋水や堺利彦も結局は日本人】
「私は、私」しかし「相手から見た私は、私自身が認識する私とはまた異なる」。単純で当たり前のことなのだが、この単純すぎる事実が、私的空間・公的空間の各所で見受けられる様々な論争や紛争の火種となっている。今回も、歴史認識問題と絡めてみていく。

 ここで再び、何度か紹介した「認識の歴史」について取り上げたい。また、対概念として「伝統としての歴史」を紹介しつつ取り上げ、「社会化された私」の葛藤を考察していきたい。 
 山崎正和氏は『歴史の真実と政治の正義』(中央公論社)の中で、「認識の歴史」とあわせて「伝統としての歴史」を歴史認識として挙げている。
 「伝統としての歴史」とは、山崎氏の説明によれば「地域性にねざし、主体は共同体であるとともに、その対象も共同体の同一性である。目的は共同体の情緒的な結束である。」とし、「(認識の歴史との間で)問題が起るのはここに一つの歴史外の力が働いたときであり、それが両者を強引に統一しようとしたとき」であるとしている。

 私の考え方として、この「伝統としての歴史」とは「社会化された私」と同じ次元のものである。
 なぜなら、「伝統としての歴史」は共同体の同一性を生むものとして、その土地と空間・環境・人間の情報緊密化によって育まれた、所作の癖・言語の深化・行儀作法から宗教的作法にいたるまでの全てを包摂した、全てに先立って存在しているものであり、「社会化された私」は自分自身に対する評価ではなく、他人が自分に与えた像を指すものであるからだ。
 簡単にするために極端に言うと、過去の時代、日本人の中に幸徳秋水(1871―1911)や堺利彦(1871―1933)のように反戦を訴えた者がいたとしても、日本という国が戦争をしたのは事実であり、それは誰の手にもかえる事ができない「伝統としての歴史」である。それは当然に「伝統としての歴史」がカバーしている共同体に生まれながらにして属している「日本人」をも含んでいる。この「日本人」の考え方は「社会化された私」そのものである。幸徳秋水や堺利彦がいくら反戦論者(非戦論者といった方が正しいが)だったと主張しても、「でもあなたは日本人だった。主観で反戦論を展開したって、客観的には日本人なのだ」といわれてしまえば終わりである。
 幸徳秋水と堺利彦は、社会主義論者だった。幸徳秋水は1910年の大逆事件で翌年処刑されてしまうが、彼らは主観的には無政府主義・社会主義の推進を掲げて活動していた(国内的には客観的にも社会主義者だったろう)が、「日本人」という名で海外から「2人の社会化された私像」を見てみると、「戦争国の一因だ」とされてしまうのである。

 「認識の歴史」は、「何が歴史か」が個人の主観によってことなるということであった。
 そして「伝統としての歴史」は「社会化された私」に対し自動的に一定の評価を与える。例えば、「あいつは日本人だ」だとか「あいつは戦犯国の子孫だ」といった具合である。
 この二つの間には、深刻な矛盾がある。
 自身を社会主義・無政府主義者と自任する者が、一方では生まれからして自動的に戦争国の一員になってしまうという幸徳・境の矛盾。平和的発展を目指していながら、他国から軍事的警戒感を向けられる中国の矛盾。従軍慰安婦はいなかったと信じていながら、国家レベルでは存在を認めているため主張するたびに内外で問題になる政治家の矛盾などなど。
 この矛盾を解消する方法があるとするならば、それは自分を他人の「私像」に合わせるか、中国の「小人革面」のように「私は私として自由にやる。歴史?政治家がもてあそぶものでしょ?」というように「自分からは判断をくださないから、何を思われても矛盾しないでしょ」という態度しかあり得ないことになる。

 我々は、如何なる立場をとるべきなのだろうか?私の4回にわたる詭弁は以上とし、そこからさきは、それこそ個人の主観と考察にお任せしたい。
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