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歴史の視点 未来から現在を規定する③

【社会化された私】
 前回まで、「認識の歴史」についてふれた。
 歴史認識問題に対し、それに賛成する者も否定する者も共通して「歴史的過去→歴史的現在→歴史的未来」という流れで歴史をとらえているものの、認識する主体が何を歴史として認識しているのかで、例えば憲法改正問題に対してまったく逆の見解となるということを検討した。
 そして、この「認識の歴史」によって導きだされた「歴史的未来」によって、我々はその未来への接続点である「歴史的現在」のあるべき姿を規定しているということを、私は述べた。
 
 以前、鳩山元首相が香港のテレビで「中国側から『日本が(尖閣を)盗んだ』と思われても仕方がない」と発言したというニュースが飛び込んできた。元首相経験者が、政府見解と異なる発言をし国益を損ねる言動をとり続けようとするその動機は不明だが、強いて知る必要もないだろう。何せ彼は、その後「そんなこと言ってない」としゃあしゃあと述べたのだから。精神病か何かなのだろう。
 このニュースを見て、私は名前と肩書き、そして歴史認識の関係について考えてみた。
 人間は、生まれて初めて名前を与えられる。そして成長の過程で、小学生、中学生、高校生、大学生、会社員、会社課長、会社社長というような社会的肩書きが与えられていく。肩書きは、個人の名前に引き寄せられて一つずつ加わって行き、やがて生身の人間とは異なった、社会化された人間となって世に登場することとなる。
 例えば、「私は私だ」という意識は、私自身を拘束している。他人が自分をどのように認識していようと、自分のことを真に理解しているのは自身だけである。なぜなら、私は24時間365日、死ぬその瞬間まで自分と共に居続ける唯一の存在だからだ。だからこそ、「私は私だ」という意識を持ち得、また持ち続ける資格を持つ。しかしそれは、時に自身を過大評価し、時に過小評価し、偏ったものになりやすい。
 他人は、例え家族、友人であろうと所詮は長い自分の人生の一部の時間を共にしているに過ぎない。どんなに自身に対する理解が深まったとしても、所詮それはその人の前でのみ現れる限定的な自分であり、それらを全てつなぎ合わせても本当の私にはならない。私自身が理解している「私」と同じにはならないのだ。例えば就職活動は、他者から見た私と、私自身が見ている私の間の深刻な分裂と矛盾を強制的に認識させられる作用を持っている。どんなに「〇〇が好き!〇〇になりたい!」と思っていても、他人が「いや、あなたにはむいていない。もっと適した仕事がある」と認識すればその仕事に就ける可能性は格段と下がる。
 しかし、この「他者から認識されることで生まれる、異なった私」は、明らかに社会的に認知された私である。私の意思とは無関係に、他者の中に私の像が埋め込まれ、それが名前や肩書きによって再生される。
 それが「社会化された人間」である。
 「私は私だ」という意識は死ぬまで途切れる事なく続くが、他者から見た「私」は、コミュニケーションをとり「他者の色眼鏡」を通した時にしか存在しない。

【肩書きが生む歯車化された私 商品化された労働力(マルクス)】
 名前に引き寄せられる肩書きは、個人の能力と社会的地位を表している。
 例えば、社長業だ。企業間の合併・統合、その他会社やビジネスの重要事項に伴う決定は、会社の全ての情報を自在に引き出せ、運用できる社長に任せた方が円滑に進む。社長たる代表取締役は、会社法・商法上、企業を代表して職務を執行しまたそれを登記しなければならないこととなっている。それは、(株式会社であれば)株主がその個人の能力を認め、対外的にはあらゆる責任と職務の中心であるということの宣言にほかならない。
 企業の経営はその代表取締役を中心にして行われていく、まさに「代表取締役=歯車」というわけだ。
 社長業に限らず、働く者は言ってしまえば全て歯車である。重要度や能力の希少性でその役割は変わってくるが、それがなければ業務は回りづらくなる。
 ただ、この歯車とは、個人が有している能力や資質の中で「その業務を遂行するに適したもの」を取り出して言っているにすぎない。マルクスは『資本論』の中で、人間は労働力を商品として資本家に売り、生産過程に入り込むことで商品に価値を加えていく旨説いたが、それは私の解釈ではこうだ。
 つまり、「個人の能力=どのような歯車になれるのか」、「社会的地位=歯車の希少性」なのだ。そして肩書きとは、その歯車の名称なのだ。

次回→「社会化された私」は、相互に矛盾する。歴史認識問題に見る矛盾の激突
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