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冬の白波をグラスの中で味わう

IMG_5660.jpg
早速だが、「冬の荒れる白波たつ海を味わうことができる」と私がいったら、どうだろう。

海を味わうといったって、汚染された塩水を直接口にすることはおすすめしない。

これは常人ではなしえない偉業である。
私でさえ、達成できるかまったく自信がなかった。




しかし、私はできたのだ。
否、できた気になったのだ。
そう、たった一杯のビールで、それを実現したのだ!!










その日、私は成田に向かう飛行機に乗るため、地元新千歳空港に来ていた。
日頃、オフィスでデスクワーク中心の仕事をしているせいか、空港の窓から見える空がいつもより広く、青く深く、非常に雄大で、無限の広がりをもっているように思われた。

—これが、日常からの開放感—
—非日常への入り口—

面白いのは、空の旅において、日常と非日常は扉一枚を隔てて存在しているわけではないということだ。

出発空港で我々は、一旦日常から隔離される。そして着陸した空港の扉の向こう側で、我々はようやく非日常と合流することができるのだ。ここが肝だ。非日常を楽しむのが旅の醍醐味だとするならば、我々とは違う平凡な一日を過ごしている人々の所へ入り込まなければならない!!非日常というのは、そういうものだと思うのだ。

—さぁ、旅のスタートだ!!思いっきりハメを外そう!!—

つまり、出発空港と到着空港の間において、我々は日常とも非日常とも違う空間に身を置くことになるのだ。
—全てから超然としていて、宙ぶらりん—
 これが旅の前の高揚感の正体だ。旅を一つの贅沢と見る人がいる。確かに、娯楽としてこの宙に浮いた状態を味わえるのは贅沢というものだろう。
 そこに重力などというものは存在しない。物理法則としての重力は目に見えない形で、しかし確実に我々を支配しているが、この気持ちの浮遊感にはさすがの重力といえどもその力を行使しえないようだ。

【豚丼という、十勝の偉大な発明品】

 出発までの時間で食事をとることにする。
 ここには、ジンギスカン、スープカレー、寿司といった北海道の得意分野から、牛丼、ラーメン、ソバのようなオールジャパンで売り込む分野に至るまで、ほぼ全分野の日本の美食が揃っている。

 悩む。
 
 大いに悩んだ。

 大いに悩んだが、友達の実家が豚丼の店を経営していると聞いたことがあったのを思い出し、豚丼を食べることにした(空港内の豚丼屋と友人の実家に何ら関係はない)。

 豚丼は十勝発祥だ。明治時代末に十勝地方で養豚が始まり、大正末期には豚食が広まりつつあったが、この時点ではまだ庶民のものとはいいがたかった。そこで、豚食をより一般的にするために帯広市の大衆食堂『ぱんちょう』創業者である阿部秀司が、庶民にも楽しめる豚肉料理としてうな丼をヒントにした甘辛タレを絡めて焼いた豚丼を考案したとされる。1933年(昭和8年)のことだ。
(おびひろ観光ナビ)

 今回、入店したのは「豚丼名人」さんである。

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 空港3階にあるレストラン街、センタープラザのエレベーターを降り、そのまままっすぐ歩いた所にある。店の入り口では、豚のキャラクターが我々を笑顔で迎えてくれる。

 店員さんに通された店内で、私はすぐに“チーズ炙り豚丼”と“ビール”を注文した。アルコールに弱い私は(飲むとすぐにお腹に赤い斑点が出てくる)、普段アルコールを口にすることはない。しかし、今回は旅の浮遊感をよりパワーアップさせるため、一杯だけ飲むことにした。

IMG_5643.jpg


「おまたせしましたー!!」

 ほどなくして豚丼がやってきた。
 
 甘辛タレの香りに、チーズの香りが程よく絡み付いている。器は熱々で、手で持つと火傷すること間違いなしといった感じだ。多分チーズをまぶした後バーナーかなにかで炙っているのだろう。そうでなければ、ここまで熱くなることは難しいのではないだろうか。

 早速一口。
 
 美味い。

 いや、不味いわけなどない。チーズとタレの絡み方が絶妙で、それでいて豚肉の食感と味をよく引き立てている。ああ、来てよかった。

 これにビールが合わないはずがない。
 普段は飲めないのに、それでもどういうわけか飲みたくなる瞬間が時々ある。今日は、これがそれだった。

 ゴク、ゴク、ゴク…。

 うん、イケる!!飛行機の中で二日酔い状態になって頭痛と闘わなければならなくなるのは目に見えているが、とにかくこの瞬間は幸せだ。

 そのとき、グラスの中で白波がたっているのが見えた。

IMG_5645.jpg


 …あ、…波。

 思わず声が出た。

 それはまるで、日本海の荒々しい波がひっきりなしに海岸に打ち付けているようで、またあるいは、いつか浮世絵で見た波の表現のようでもあった。
 少しずつビールを飲んでいたから、泡の一番上の部分が線になって残ったのだろう。
 よくよく考えれば、絵画というものは人間がキャンバスの上に線と色を駆使して平面上に別世界を映し出すものである。通常は鉛筆や筆、絵の具でそれをおこなうわけだが、線と色を出すのはこれら小道具の専売特許というわけではない。ビールの泡だって良いのだ。

 図らずも、私は絵画の神髄をグラスの中で表現してしまったというわけだ。これは神ってる。

 …にしてもだ。何でもないときに見ればそれはただの泡でできた線である。

 にも関わらず、どうしてまた私はこれを波として見てしまったのだろうか。
 恐らく、これから非日常の世界に飛び込もうという高揚感や日常から切り離されつつある浮遊感と無関係ではないだろう。気持ちは既に空の上にいるため、特に意味のない線から何か突拍子もないものを連想しがちになっているのだ。ほら見ろ、気持ちは空の上にいると言いながら、どうして連想した物は海なのか。しかも脳内のスクリーンに映し出されているのは海岸に打ち付ける白波か浮世絵だ。この脈絡のなさが謎めいていて、それでいて面白かった。

 しばらくそんな妄想に耽った後、私は成田行きの便に乗り込むべく、お会計をすませて保安検査場へ急いで向かったのだった。

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