学びの視点 インコタームズの扱いにくさ〜費用負担の側面から
私の仕事の一つは、海外からコンテナ船や航空機で貨物を輸送するための手配を行うことです。
そのときに問題となるのが、インコタームズです。
EXWやFOB、CFRといったものが有名ですね。
しかしこのインコタームズというやつは、教科書的な知識だけではそう簡単に乗り越えられないほど厄介な性格を有しているといっても過言ではありません。私自身、この仕事を担当して日が浅いため、毎度毎度苦労しています。
今回は、そのインコタームズ、特に費用負担について考えていきたいと思います。
インコタームズの一つであるFOBは、通常「本船渡条件」と呼ばれます。
手元にある貿易実務検定の教科書『最新貿易実務ベーシックマニュアル 改訂2版』(日本貿易実務検定協会)の説明を引用してみましょう。
貨物が輸出港に停泊中の、買主によって指定された本船の船上に売主の手によって置かれたとき、
…、貨物の危険負担・費用負担が売主から買主に移転します。
危険負担とは、輸送時に発生する諸問題に対する責任の所在、保険の適用等においてその負担を負うことを言い
ます。
また費用負担とは、文字通りその費用を負担することを言います。
次に、CFR(運賃込条件)を見てみましょう。
…費用負担については、輸入港までの運賃を含み売主が負担します。
さて、費用負担に注目してみましょう。
FOBの説明では、売主が費用を負担するのは貨物を船上に置くまででした。対するCFRの売主の費用負担は、輸入港まででした。
一見すると簡単ですが、例えば日本からニューヨークに貨物を輸出する場合、インボイス上に「CFR Tokyo」と書かれていたらどのように解釈すれば良いのでしょうか。
この場合、CFRの条件が適用されるのは東京港までです。なぜなら、インボイス上に記載されているインコタームズの種類と適用範囲が「CFR Tokyo」としているからです。教科書での説明だと「CFRを適用した時の売主の費用負担は輸入港まで」となっているので、無条件にニューヨークまでの費用を売主が負担してくれるような錯覚を覚えます。しかし、インボイスの条件は東京港までですので、売主は出荷元の工場から船積みまでの費用は負担してくれますが、それ以降は買主が費用負担しなければなりません。事実上、FOBというわけです。
CFRの話しをする時、BAFをシッパーと買主のどちらが負担するのかも気になるところです。
BAF(Bunker Adjustment Factor)…バンカー・チャージとも呼ばれ、船舶燃料の急激な変動に対処するための運賃。
CFRは、シッパーが輸入港までの海上運賃を負担する条件ですが、BAFまでも負担してくれるわけでは必ずしもありません。なぜなら、CFRで運送の手配をするときにシッパーと船社との間で行われた契約では海上運賃のみが対象とされ、運送の途中で追加的に発生する費用はカバーされていないことが多いからです。
CFRの説明であった「輸入港までの運賃を含み売主が負担」は、気をつけないと「運賃は負担するけれど、それ以外の追加費用は面倒みないよ」という解釈を受け入れることになってしまいます。
つまり、インコタームズの教科書的定義と説明は、実務では更に内容や解釈が大きく変更され、またはねじ曲げられた形で運用されていることが多々あるのです。
長年携わっているプロの方ならいざ知らず、この仕事に就いたばかりという人は是非とも注意したいところです。
そのときに問題となるのが、インコタームズです。
EXWやFOB、CFRといったものが有名ですね。
しかしこのインコタームズというやつは、教科書的な知識だけではそう簡単に乗り越えられないほど厄介な性格を有しているといっても過言ではありません。私自身、この仕事を担当して日が浅いため、毎度毎度苦労しています。
今回は、そのインコタームズ、特に費用負担について考えていきたいと思います。
インコタームズの一つであるFOBは、通常「本船渡条件」と呼ばれます。
手元にある貿易実務検定の教科書『最新貿易実務ベーシックマニュアル 改訂2版』(日本貿易実務検定協会)の説明を引用してみましょう。
貨物が輸出港に停泊中の、買主によって指定された本船の船上に売主の手によって置かれたとき、
…、貨物の危険負担・費用負担が売主から買主に移転します。
危険負担とは、輸送時に発生する諸問題に対する責任の所在、保険の適用等においてその負担を負うことを言い
ます。
また費用負担とは、文字通りその費用を負担することを言います。
次に、CFR(運賃込条件)を見てみましょう。
…費用負担については、輸入港までの運賃を含み売主が負担します。
さて、費用負担に注目してみましょう。
FOBの説明では、売主が費用を負担するのは貨物を船上に置くまででした。対するCFRの売主の費用負担は、輸入港まででした。
一見すると簡単ですが、例えば日本からニューヨークに貨物を輸出する場合、インボイス上に「CFR Tokyo」と書かれていたらどのように解釈すれば良いのでしょうか。
この場合、CFRの条件が適用されるのは東京港までです。なぜなら、インボイス上に記載されているインコタームズの種類と適用範囲が「CFR Tokyo」としているからです。教科書での説明だと「CFRを適用した時の売主の費用負担は輸入港まで」となっているので、無条件にニューヨークまでの費用を売主が負担してくれるような錯覚を覚えます。しかし、インボイスの条件は東京港までですので、売主は出荷元の工場から船積みまでの費用は負担してくれますが、それ以降は買主が費用負担しなければなりません。事実上、FOBというわけです。
CFRの話しをする時、BAFをシッパーと買主のどちらが負担するのかも気になるところです。
BAF(Bunker Adjustment Factor)…バンカー・チャージとも呼ばれ、船舶燃料の急激な変動に対処するための運賃。
CFRは、シッパーが輸入港までの海上運賃を負担する条件ですが、BAFまでも負担してくれるわけでは必ずしもありません。なぜなら、CFRで運送の手配をするときにシッパーと船社との間で行われた契約では海上運賃のみが対象とされ、運送の途中で追加的に発生する費用はカバーされていないことが多いからです。
CFRの説明であった「輸入港までの運賃を含み売主が負担」は、気をつけないと「運賃は負担するけれど、それ以外の追加費用は面倒みないよ」という解釈を受け入れることになってしまいます。
つまり、インコタームズの教科書的定義と説明は、実務では更に内容や解釈が大きく変更され、またはねじ曲げられた形で運用されていることが多々あるのです。
長年携わっているプロの方ならいざ知らず、この仕事に就いたばかりという人は是非とも注意したいところです。
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