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社会の視点 郷土愛と生のせめぎ合いについて

10月。政府与党が検討を進めている福島復興加速化案が、放射能の影響で帰還が困難になった住人の移住を促進するための施策について触れたことが衝撃を呼びました。
故郷に戻りたいと願う人々に冷や水を浴びせる形になりましたが、放射能の恐怖という点を純粋に捉えれば、寧ろ「不可能なのは誰の目から見ても明らかだったはずだ」という結論にならざるを得ないのではないでしょうか。

私たちが故郷に思いを馳せるのはなぜでしょうか。
人は、何らかの外部情報によって記憶を呼び覚ますことができます。文字や絵、見慣れた景色、言葉、色、空気、におい、そうしたものが頭の中で記憶と結びつけられ、引き出されるのです。
故郷というものは、記憶を引き出すためのに最適な装置となっているのです。人は、話しや本で見聞きしただけの情報よりは、自らの体験や感情を伴って蓄積した情報の方が記憶しやすい生き物です。故郷は、出生から今日に至るまでの過程を過ごした場所ですから、街の至る所に「記憶を引き出す鍵」がちりばめられているといえるのです。
私たちが故郷を恋しく思うのは、そうした記憶や感情を身体に呼び覚まし、活きているということの実感をもたらしてくれるからです。

東日本大震災関連の報道が「故郷に帰れない被災者」を映し出すたびに、皆の胸が締め付けるのは、そうした記憶から強制的に隔離され、土地と結びついていた「生」が突如として記憶無き「裸の浪々人」となってしまったのを認識してしまうからです。

とはいえ、日本は不思議な国です。
この国には、企業、ひいては資本の論理で住む場所を転々としなければならない人生というものが存在するのです。それが「サラリーマン」というもの。「様々な地域で仕事をして経験を積む」「市場にあわせて人を配置するため」等の名目で、自らの意思とは無関係に住み慣れた土地を離れなければならない人々です。
増殖と流通こそが存在の証明そのものである資本の論理は、日本の「従業員」像と深く結びつき、「郷土愛」とは別に「会社への忠誠心」という概念を生み出します。年功序列・終身雇用をはじめとした制度と価値観の下、「生活していくため」には、「今の会社で頑張ること」が前提となってしまっている以上、郷土愛には一旦目をつぶらなければならないというのが現状なのです。
「忠誠心は一時的なものだから、郷土愛より軽いものだ。戻ろうと思えば、退職後や転職という形で戻れるし、何より最初から地元で働けばいいではないか」と言う方もいるかもしれませんが、地方の疲弊した経済、若い人材の流出、高齢化した人、財政難の行政等等、問題が山積みになっているなかで、果たして我々は、どこまでこの主張を貫けるのでしょうか。

故郷への愛は尊いものであることに間違いないのですが、「生きる為に何をすべきか」は、生まれてしまった我々が死ぬまで向き合っていかなければならない一生ものの課題です。
北海道に渡ってきた本州の開拓者は、経済的利益のために故郷を離れました。地方の若者は、寂れて行く地元では将来が見えないから故郷を離れてしまいます。サラリーマンは、生きる為に住む町を点々とします。開拓者も若者も、皆経済的利益(生)の為に故郷を離れてしまうのです。

福島の帰還困難者に限らず、我々は皆、郷土愛と生のせめぎ合いのなかで生きているという事実を忘れてはならないでしょう。
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